間違いない鍋選びの鉄則[2024年版]
キッチンで毎日何気なく使っている鍋。大きさや素材、種類によってさまざまものがあります。
サイズやデザイン、素材などの違いで、とても多くの種類が販売されていますが、実際何がどう違うかはイマイチよくわからないという人も少なくありません。
じつは素材や種類によって、それぞれに長所短所、向いている料理や不向きな使い方などがあります。
ストウブやル・クルーゼといった高価な鋳物ホーロー鍋は煮込み料理には適していますが、それで味噌汁を作ったところでおいしくなるわけではありません。その鍋の持つ特徴にあった使い方をしてこそ、はじめてその鍋の実力を生かせるのです。
ここでは家庭で使う鍋の種類を整理して、どんな鍋がどのように使えるのかを紹介します。
contents
形状で選ぶ
鍋の形状としては、持ち手の種類によって片手鍋と両手鍋があります。片手鍋は小型で軽量。フライパンのように持ち手が少し長くなっていて、持ちやすくなっています。ちょっとした汁物を作るときなどに使いやすい鍋です。
両手鍋は鍋の両側に持ち手のついていて、持ち運ぶときには両手で持ちます。容量の多い料理などを作るときに使い、煮込み料理などに使いやすいタイプのものです。片手鍋、両手鍋それぞれにサイズや深さなどにバリエーションがあります。
サイズで選ぶ
サイズは16センチくらいからだいたい2センチ刻みで28センチくらいまでのサイズがあります。鍋は必ずしも大は小を兼ねるわけでないので、適正なサイズを使い分けたいところです。
たとえば魚を丸ごと煮込むなら、ある程度の大きさが必要ですが、煮卵のように素材全体を煮汁に浸す料理では、大きな鍋ではたくさんの煮汁が必要になって調味料に無駄が出ます。
大きさの違う鍋を使い分け、たとえば2~4人くらいの家族で使うなら、16cm、20cm、24cmくらいの3サイズがあればいいでしょう。
少量の味噌汁などを作るなら16cmの片手鍋、ちょっとした煮物などには20cmの片手鍋(両手鍋でも可)、カレーなどをたくさん作るには24cmの両手鍋といった使い分けができます。
素材で選ぶ
鍋の素材によっても、向いている料理や不向きな料理などがあります。一般的に使われている鍋の素材について、紹介します。
アルミニウム
多くの鍋に使われているアルミニウムは、熱伝導率が高いので火の通りが早く、軽くて使いやすいのが特徴です。
しかし酸やアルカリに弱いので、食材を長く漬け込んだりするのには向きません。色移りすることもあります。またIHにも対応していません(底部にIH対応金属を使った板を張り付けて対応させている鍋もあります)。
ですが、とにかく火の通りが早くお湯もすぐにわくので、出汁をとったり、手軽にみそ汁などを作るにはこのアルミ鍋が向いています。さっと和えるだけのパスタなどイタリアンなどではアルミの鍋やフライパンを使うことが多いです。軽いので扱いやすくというのも大きな利点で、片手の雪平鍋などはよく使われています。
ティファールの取っ手のとれる鍋など、アルミニウムにフッ素樹脂コーティングした鍋も少なくありません。
メンテナンスは?
アルミニウムは酸やアルカリに弱いため、それらを含んだ食材を入れると色移りをすることがあります。使っているうちに多少黒ずんでくることもあるので、使ったらなるべくはやく中身をあけて洗うようにします。また素材がやわらかいので、落としたりぶつけたりするとへこんでしまいます。このあたりも注意が必要です。
また表面がフッ素加工(またはセラミック加工)されている製品は、表面を傷つけないように使用する必要があります。製品によっては金属製の調理器具を使っても大丈夫、というものもありますが、傷と汚れはフッ素などの表面加工を傷めることになります。
また熱い鍋を急に水で冷やすなどの急冷も加工を傷めます。洗浄は中性洗剤とスポンジ等でやさしく扱う必要があります。
ステンレス
ステンレスはさびにくく、焦げ付きにも強いので手入れが容易で、比較的長く使い続けられる素材です。IHにも対応しています。
ただしステンレスは熱伝導率が悪いので、一般的にはアルミなどを挟み込むなどの多層構造になっているものが多いです。多層構造には3層、5層、7層、9層などいろいろな種類があります。製品によっては底面部のみが多層になっているものと、側面まで全部が多層素材が使われているものがあります。当然、全面多層構造の鍋のほうが熱効率がいいので早く煮えますが、その分、重くなりやすいです。
ステンレスは加工がしやすく、本体とフタを高精度に合わせられる構造によって無水調理ができることを売りにしているモデルもあります。素材の水分だけで調理でき、食材の旨味を引き出す無水調理は今人気になっています。
オールマイティに使いやすい素材ですが、炒め物などでは、十分に加熱してから油を入れて材料を入れないと、食材が鍋にくっついてしまうことがあります。そのあたりの使い勝手には慣れが必要です。
ステンレスは丈夫で長く使えるため、しっかりとしたつくりのものを選べば長い間使えます。フィスラーやビタクラフト、クリステル、ジオプロダクトといったブランドの商品が人気です。
メンテナンスは?
ステンレスは焦げ付かせてしまっても、クレンザーなどで磨くことでもとのようにきれいにできます。素材としても硬くて丈夫なので、長い間使うことができます。よいものを長く使うという意味では、ステンレスの鍋はとても向いています。
鉄・鋳鉄・鋳物ホーロー
鉄または、型に鉄を流し込んでつくる鋳鉄は、重くて扱いにくいですが、熱伝導率が比較的よい素材です。素材が厚ければ蓄熱性にも優れます。鉄の鍋といえば中華鍋、鋳鉄ではダッジオーブンが代表的な鍋でしょう。
さらに鋳鉄などの鍋にホーロー加工を加えたホーロー鍋があります。ル・クルーゼやストウブ、バーミキュラなどのブランドが有名です。豊富なカラーやデザインも人気で、実用性の高さからも人気の鍋です。そもそもホーローとは、ガラス質のエナメル(釉薬)を焼き付けてコーティングしたもの。腐食しにくく、保温性、耐摩耗性が高く、においが移りにくいといった利点を持っています。
鋳物ホーロー鍋は、鋳鉄の蓄熱性の高さに加え、重いフタによって密閉性も高いため、素材本来の旨みや栄養分を引き出し、煮込み料理に向いています。ダッジオーブンは表面にホーロー加工がされていないというだけで、蓄熱性や密閉性などは同等の傾向を持ちます。
逆に同じようにホーロー加工されている鍋でも、素材が鋳物ではなく薄い鋼板を使っているものもあります。DANSKや野田琺瑯などのアイテムはそのタイプです。これらのアイテムは、腐食しにくい、匂い移りがしにくいというホーローのメリットのみを活かした鍋です。アイテム自体は軽く、持ち運びがしやすいですが、鋳物鍋のような密閉性などは持ち合わせていません。ホーロー加工された鍋と言っても、その性質はどれも同じではありません。
メンテナンスは?
表面加工されていない鉄や鋳物の鍋は、洗剤を使わずに水洗いが基本です。表面の油分が残ることで、食材がくっつきにくくなり、さびを防ぎます。食材を焦げ付かせてしまったときには、水を入れて沸騰させてから、焦げを落とします。金属たわしやクレンザーなどを使っても大丈夫です。ステンレスと同様に表面加工をしていない鉄や鋳物の鍋は、丈夫さにおいては大変優れています。
ホーロー加工されている鍋は、落としたりぶつけたりといった衝撃には弱く、ホーローが割れてしまうこともあるので注意が必要です。金属の調理器具を強くぶつけてもガラス質のホーローが割れてしまうことがあります。また焦げ付かせてしまったときには、鉄と同じように水を入れて沸騰させて、焦げを浮かせます。もしそれでもとれないときは、重曹を入れて沸騰させるといった方法があります。ホーローは傷をつけたり、割ったりするとそこからひびが入り、剥がれてくることがあります。そうした点に注意をすれば、丈夫な鍋ですので長い間使い続けることもできます。
そのほかの素材
鍋に使われている素材としてはほかにもいくつかあります。熱伝導率が非常に高い銅は、シェフやパティシエなどプロの現場で使われることがあります。一般家庭でも利用されることがありますが、しっかりとした手入れがそれなりに必要になります。
またガラスで作られている鍋もあります。見た目がいいので調理してそのままテーブルにサーブできるメリットもあります。
そのほか、最近ではカーボン製の鍋も注目されています。加工が難しいためとても高価な鍋ですが、カーボン(炭)の遠赤外線効果で、料理がおいしくなるとその実力が認知されてきています。アナオリカーボンポットシリーズが、デザイン性も高く人気になっています。
また鍋料理などに使われることの多い土鍋もあります。ごはんもおいしく炊けるということで、ごはん専用土鍋も販売されています。伊賀焼で有名な永谷園の「かまどさん」などや、無印良品の「土釜おこげ」(これも伊賀焼です)なども人気のある製品です。
土鍋は落とすと欠けますし、濡れたまま火にかけたりするとひびが入るなど、使い方には注意が必要です。またIHでも使えません。それでも分厚い土鍋で炊いたごはんはおいしく、使って良かったと思えるアイテムです。鍋によるごはん炊きについての記事はまた改めて掲載します。
結局、買うべきなのはどんな鍋?
こうした素材の特徴と先ほどのサイズを合わせて考えると、16センチの鍋はアルミまたはステンレスの片手鍋が、汁物を作ったり葉物をゆでたりするのに便利でしょう。20センチの鍋は煮物全般に使いやすい鍋で、アルミやステンレスがオールマイティに使えておすすめです。24センチはカレーやシチュー、おでん、煮魚など、じっくり煮込む料理に使いたい。鋳鉄ホーローやステンレスなどが向いています。
ビギナーならセット物などでそろえる
はじめて一人暮らしをする人や、結婚して新居を構える人などには、複数のサイズがそろったセットものもおすすめです。
たとえばティファールの取っ手の取れる鍋は、複数サイズの鍋とフライパン、フタなどがそろって1万円程度で購入できます。表面にフッ素加工がされているので、料理初心者でも使いやすいアイテムです。定番アイテムなので、フッ素加工がだめになってきたら、そのサイズの鍋だけ単品で買い換えることもできます。
またステンレス鍋も長く使えるので、最初からこちらのセットを選ぶという手もあります。フィスラーやビタクラフトなどのセット物も、型落ちや入門向けモデルなら4点セットで1万円程度で購入できたりします。セットではありませんが、無印良品のアイテムも価格が安めで、きちんとした作りのわりにデザインもいいので買いやすい製品です。
買い換えや用途別での選び方
ある程度料理をする人が、古い鍋を買い換えたりするには、ジオプロダクトやクリステルなどのステンレス鍋を選択するのはおすすめです。定番でデザインもあまり変わらないので、少しずつ買い換えていくというそろえ方にも向いています。鍋そのものの性能も高いので、いい物を長く使いたいというニーズにぴったりです。ほかにもフィスラーやビタクラフト、ツヴィリング、WMFなど、ステンレスは選択肢の広い鍋です。
また料理によって鍋を使い分けたいなら、用途別に購入するケースもあります。
たとえばしっかり煮込んだりするための鋳物ホーロー鍋は、メジャーなところだと、ル・クルーゼ、ストウブ、シャスール、バーミキュラがメジャーです。これらはメーカーによって、製品の傾向が少しずつ異なりますが、そのあたりは別記事でご紹介します。いずれにしても鋳物ホーロー鍋があると、じっくり煮込む料理は圧倒的においしくできます。2人家族なら18〜20cm、4人家族なら22〜24cmあたりのものが目安になります。
さっと味噌汁を作りたい、出汁をとりたいという用途なら、アルミの片手鍋がいちばん使いやすいでしょう。軽くて持ちやすく、お湯が沸くのも早いので、少量の料理には使い勝手のいい鍋です。
大量のお湯を沸かして、パスタをゆでたり、麺をゆでたり、大量のスープを作るといった用途なら、深さのある大鍋が必要です。たとえばアルミの寸胴鍋やパスタポットというアイテムです。パスタなどは長いのでゆでるときにある程度の深さが必要ですし、大量のお湯なら麺を入れたときに温度が下がらず、しあがりが安定します。
手間暇を軽減できる鍋
こうした鍋とは別に特別な機能を持つ鍋があります。
そのひとつが圧力鍋です。鍋と蓋を密閉することで鍋内部に圧力をかけ、通常よりも高温で調理できます。そのため時間のかかる煮込みなどが短時間で調理でき、時間とエネルギーを節約できるという鍋です。玄米を炊く、豆を煮る、ビーフシチューや豚の角煮など時間のかかる料理が手軽に作れるのがメリットです。ティファールやフィスラー、WMFなどといったブランドから発売されていますが、圧力鍋選びもまた別記事を用意します。
他にも鍋の余熱を利用して調理する保温調理鍋というものもあります。サーモスのシャトルシェフが有名です。加熱した鍋を火から外して、保温調理器に入れると、鍋の余熱だけで調理を進みます。余熱調理なので、煮込みすぎて具材が溶けてしまうようなことはありません。火を使わないで調理が進むので、キッチンにずっとついている必要がなく、外出している間に料理ができているというすぐれものです。火を使う時間が短いので、エネルギーの節約になるし、小さな子どもがいる家などにおすすめです。
圧力鍋が短時間で加熱調理できることがメリットなのに対し、保温調理鍋は火にかけていない間も調理が進むことがメリットのため、決して短時間でできるわけではありません。似たような機能の鍋ですが、この違いは認識しておきましょう。
また最近では電気圧力鍋や、自動調理家電といったものも登場してきています。これらはまた家電のジャンルでご紹介します。
まとめ
鍋はこわれにくいアイテムなので、使いにくいなと思っても、つい使い続けてしまうことも少なくありません。でも使いやすい鍋を購入するだけで、料理が楽しくなったり、格段においしくなったりもします。これからの鍋選びの参考にしてみてください。