時間を有効活用できるサーモスのシャトルシェフ

 サーモスは1904年にドイツで創業された魔法びんの老舗ブランドで、いまなお世界中でサーモスの魔法びんは愛用されています。その魔法びんの技術を応用して、余熱を利用して調理を進めるというシャトルシェフという保温調理鍋があります。今回はこのシャトルシェフをを紹介します。

余熱調理なのでほったらかしにできる

 保温調理とは余熱を利用して調理を進める調理方法です。鋳物ホーロー鍋のように分厚い素材の鍋などは、火を止めても鍋に熱が蓄えられているので、その余熱で調理を進めることができます。昔から、鍋のまわりにキルティングの布をかぶせたりして、余熱を利用して調理を進めることは生活の知恵として行われてきました。

 サーモスのシャトルシェフは魔法びんの仕組みを応用して、保温調理を行うために作られた鍋です。魔法びんは二重になった容器の間に真空の層を作ることで断熱し、熱いお湯は熱いままに、冷たい水は冷たいままに保温・保冷します。加熱して十分熱くなった鍋を魔法びん構造の保温容器の中に入れることで、鍋に布をかぶせるよりもずっと効率よく余熱調理ができるのです。

 シャトルシェフのメリットはいろいろありますが、最大のメリットは、ずっと鍋の前についていなくてもすむこでしょう。短時間加熱したあと、保温容器に入れてしまえば、あとは出かけてしまってもOKです。帰ってきたときには料理ができあがっているので、ずっとキッチンにいなくよく、時間を有効活用できるのです。保温中は火を使わないので、小さい子どもがいる家庭などでも安心感が高いのもポイント。また実際に火にかけている時間は長くないので、ガス代や電気代も抑えられます。

 シャトルシェフは、火にかけている時間が短いということで、よく圧力鍋と比較されることがありますが、基本的にはまったく別ものです。圧力鍋は高温で調理することで短時間で煮込むことができる調理方法で、調理中にレンジ台から離れることができません。一方保温調理鍋は、約90〜70度での保温調理なので、調理時間自体は短縮されません。ただし短時間の加熱後の保温調理中は火を使わないので、ほったらかしにできます。朝出かける前に仕込んでおけば、夕方帰宅したときにはできあがっているというような使い方ができます。

 また圧力鍋は、加熱しすぎると野菜などが全部溶けてしまうこともありますが、保温調理では煮崩れしたり、焦がしたりしまう恐れはありません。煮詰まって味が濃くなってしまうこともないので、味を決めやすく、失敗の少ない調理方法だといえます。

煮物に便利、炊飯にも活用できる

肉じゃがを作ってみた

 まず煮物料理の代表的な肉じゃがを作ってみました。大きめに切ったジャガイモやタマネギなどの材料を炒めて、だし汁を加え、沸騰したら調味料を入れて5分加熱。牛肉を加えてあくを取りながら5分加熱したら保温調理器に1時間以上入れてできあがり。保温調理では煮崩れしにくいので、ジャガイモ本来のほくほく感が味わえます。

 煮物には本当に向いている調理器具で、豚の角煮やおでん、ブイヤベース、ぶり大根、黒豆など、さまざまな料理が、失敗なしにきれいにできあがります。

カレーもおいしくできる

 つぎに手羽元を使ったカレーを作ってみた。はじめに肉の表面を焼き付けてから一度取り出し、タマネギを炒めて、ニンジンやジャガイモを炒め、水を入れて沸騰させます。肉を戻し入れて、あくを取りながら5分間加熱して、保温容器に入れます。30分以上保温したら、ルーを入れて溶かしてできあがりです。野菜をよりやわらかくしたりするのは、保温時間で調整するといいでしょう。鶏肉は加熱しすぎるとぱさぱさになりやすいですが、シャトルシェフは高温になりすぎないので、やわらかくジューシーに仕上がります。これも保温調理ならではのメリットです。

炊飯にも活用できます

 またシャトルシェフは炊飯にも活用できます。今回はサツマイモごはんを作ってみます。洗った米と水を入れて30分ほど置いておき、皮付きのままカットして、水にさらしたサツマイモを加えます。昆布、酒、塩を入れて5分間加熱して、保温容器に15分入れます。炊きあがったら一度全体をざっくりと混ぜて、フタをして15分ほど蒸らしてできあがりです。ごはんはふっくらもちっとした仕上がりになります。サツマイモの甘みと、昆布だしの香りのするおいしい一品ができあがりです。

 同様にお米を使ったピラフやリゾットといった料理もシャトルシェフなら失敗なくおいしく作れます。

デザートも作れちゃいます

 さらにデザートにも活用できます。フルーツのコンポートなど、じっくり味をしみこませたい料理に向いています。1房ずつカットした、グレープフルーツを白ワインと水、グラニュー糖、レモンスライスを入れ、キッチンペーパーで落としぶたをして5分加熱。保温容器で1時間以上保温したらできあがりです。フルーツの酸味と、シロップの甘さがうまく調和して、大人も楽しめるデザートになりました。

選び方と使い方の鉄則

 保温調理鍋は、鍋の温度を保温容器でキープすることで余熱調理できるという仕組みです。したがって、大きすぎる鍋に少しだけ食材を入れて保温しても温度がすぐに下がってしまい余熱調理がしにくくなります。食材が鍋に多めに入っている方が、余熱が十分に維持されて調理が進みます。保温調理鍋に限っては大は小を兼ねません。今回使用したKBG-3000は調理鍋の容量は3リットルで、3〜5人用です。この上のサイズだと4.5リットルの4〜6人用になります。自宅でよく使う鍋の容量をチェックして適切なサイズを選びましょう。

 また保温容器にずっと鍋を入れておくと、保温状態が続くため、夏場など菌の繁殖がしやすい温度を維持して腐りやすくなってしまう恐れがあります。保温時間がすぎたら、鍋は保温容器から出しておきます。長時間放置するなら冷蔵庫に入れるなどの対策も必要です。また朝、料理を作って夕方まで保温する時間が6〜8時間を過ぎるようなら、一度保温容器から取り出して調理鍋を再加熱しましょう。味見などをしてフタをあけると雑菌が入りやすくなるので、再加熱するなどの工夫もが必要です。

 こうした注意点を守れば、シャトルシェフはかなり多用途に使える鍋です。とくに火のそばにいなくてもすむのは、実際の日常生活ではかなり使い勝手がいいでしょう。買い物に行く前にちょっと余っていた野菜などを入れてセットしておけば、帰ってきたらスープが一品できている、という使い方などは実生活ではとても便利です。また帰宅時間がまちまちの家庭などでは、カレーやシチューなどを加熱して入れておけば、夜遅く帰ってきたときにも温め直さずにすぐに食べられます。

 調理器具としては調理の失敗が少なく、用途も幅広く使えます。長時間かかる煮込み料理でレンジ台を独占しないのもありがたいです。ほっといて料理ができあがるというのはかなり便利で、キッチンのラインナップに加えたいアイテムです。