フライパン選びの鉄則
フライパンは、オールマイティに使える超便利調理器具。炒める、焼くは当たり前ですが、煮物にも活用でき、やろうと思えば米だって炊けます。初めに買うべき調理器具は、フライパンでしょう。
フライパンを選ぶ際のポイントはサイズと素材
まずフライパンは1000円程度で買えるものから、数万円するものまで多種多彩です。価格の差は素材や製法、サイズなどで変わってきます。
サイズを選ぶ
サイズに関しては、一人暮らしなのか、家族で暮らしているのかなどによっても選択肢は異なりますが、とりあえずのファーストチョイスは24〜26cmのものをおすすめします。
1人用として目玉焼きを焼くのにも、3〜4人分の炒め物のなどにも使えるサイズです。少し深さのあるものが炒め物や煮物などにも使えて便利でしょう。
セカンドチョイスとしては、ちょっとの量をさっと調理できる20cmくらいのものがあると便利です。オムレツなどを作るのにもちょうどいい大きさです。
アルミニウム+フッ素加工
もっとも一般的なものは、フライパンはアルミニウムで製造し、表面にフッ素加工をしたフライパンです。これにフッ素加工をすることで、焦げ付きがなく、錆びないというメリットが生まれます。軽くて扱いやすく、焦げ付かないので、誰にでも手軽に使えます。
ただし、フッ素加工といっても、製品ごとに加工の方法が異なり、中には非常に強度の高い加工がなされている製品もあります。フッ素加工を何層も重ねて、加工が剥がれにくいなどの製品もあります。傷がつきにくく、長持ちしやすいですが、加工の効果がいつまでも続くわけではなく、ある程度時間がたつと焦げ付くようになります。フッ素加工されたメリットが失われてくるので、買い換えを検討することになります。
加工には寿命がある
このフッ素加工の寿命については、使い方にもよるので、どの程度持つかというのはなんともいえません。半年くらいで焦げ付くようになったり、3年以上持ったりと、ケースバイケースです。実はフッ素加工のフライパンはNG事項が多く、比較的デリケートな調理器具です。フッ素加工のNG事項については、下記の記事で触れていますのでご参照ください。
また、テフロン加工という名称は、ケマーズ社(旧デュポン社)の登録商標で加工としてはフッ素加工とほぼ同じです。さらにマーブル加工やダイヤモンドコーティングなどの名称のついている加工もありますが、これも基本的にはフッ素加工の一種です。セラミック加工については、フッ素加工と少し異なりますが(たとえば耐熱性が高く、フッ素加工より高温に強いなど)、使い方のデリケートさなどはほぼ同じと思っていいでしょう。
ガス火専用かIT対応か
ちなみにアルミニウムは熱伝導がよい(すぐに温まり、冷めるのも早い)というメリットがあるものの、IHで利用できません。そのためIHで使えるようにするために、アルミのフライパンの底にステンレスなどの合金を貼り付ける必要があります。IH対応のモデルは底面にそうした合金のプレートを貼り付けてあり、こちらのほうは値段が少し高くなり、重量も増します。
ガス火専用のほうが安いのですが、もし引っ越しなどでIH環境のキッチンに変わった場合には買い換えになります。まあ、コーティングの寿命も3年くらいと考えたら、買い換えることも想定しておくこともありだと思います。
取っ手がとれるモデルはよい?
以前は取っ手がとれるのはティファールだけでしたが、今では他社の製品も取っ手がとれるモデルを売り出しています。取っ手がとれるモデルは便利かといえば、とても便利です。とくに収納で威力を発揮します。鍋を重ねて収納できるので、スペースをとらないですみます。
いくつものフライパンや鍋を使いながら調理するときに、いちいち取っ手を付け替えるのが面倒に思うときもありますが、取っ手だけでオプション購入ができるので、付け替えが面倒なら追加で取っ手を買うといいでしょう。
鍋をロックする取っ手のパーツがちょっと洗いにくいというのがデメリットといえばデメリットです。衛生面が気になる方は購入するときに、取っ手のパーツをよく確認してみてください。
アルミ+フッ素加工のフライパンは、デメリットもありますが、誰にでも導入しやすいフライパンで、はじめに買うべきフライパンとしてはベストでしょう。ティファールやサーモス、アイリスオーヤマなどからセットになったものが販売されています。
ちなみにわが家で使っているフッ素加工のフライパンは、現在はバッラリーニというイタリアのフライパンです。分厚いアルミ鍛造に5層コーティングで丈夫な感じです。実際3年近く使っていますが、26cmのものはまだコーティングの効果も残っています。21cmのものはオムライスなどを作ったときにちょっとくっつくようになったので、そろそろ買い換えかもという感じです。
鉄のフライパン
鉄はアルミに比べると熱伝導率は落ちますが(約1/3程度)、逆に蓄熱性があるのでステーキなどを焼くときなどに向いています。ホットケーキなども表面カリッと中はふわっとという焼き具合が実現できます。
鉄のフライパンは、熱に強く、いくら高温にしても大丈夫。中華料理で鉄の中華鍋を使って、強火でがんがん炒めていますが、あのイメージです。高温で短時間加熱することで、炒め物はしゃきしゃきになります。
焦げやすい、くっつきやすい、というイメージもありますが、それは使い方の問題です。購入直後には、から焼きをして、油をなじませたりする処理が必要になります。しかしあとは食材を入れる前に十分加熱して、油を入れればくっつくこともありません。むしろ、もし焦げ付いてもフッ素樹脂加工と違って金だわしでごしごしこすって復活させることができるので、ある意味一生ものです。
わが家で使用しているのは、24cmのものがターク、20cmのものがデバイヤのフライパンです。
タークのクラシックフライパンについては下記の記事を書いています。
鋳鉄フライパン
鋳鉄は溶かした鉄を型に入れて作る技術で、ホーロー鍋などでよく使われています。またアウトドアでよく使われているスキレットやダッジオーブンなども有名です。
ホーロー鍋で有名なバーミキュラから、限界まで薄い鋳鉄を使ったバーミキュラフライパンが登場しており、人気になっています。
中華鍋
またフライパンだけでなく、中華鍋も鉄製のものが人気です。強火でさっと炒めることでシャキシャキの食感になりますし、チャーハンなどもパラパラになります。
中華鍋については、山田工業所の打ち出し中華鍋の記事を書いています。
中華鍋は山田工業所の鉄のものと、錦見鋳造の「魔法の北京鍋」という鋳鉄のものを使っています。
アルミのフライパン
熱伝導率の高いアルミのフライパンは、とくにパスタ料理などでソースの水分を飛ばして、パスタと混ぜ合わせるのに向いていますので、イタリアンレストランでよく見かけます。
軽くて熱伝導率が高いので、扱いやすいのですが、その一方で高温に弱い、焦げ付きやすいなどのデメリットもあります。強火で表面を焼いて、余熱でじっくり火を通すといったステーキの調理などには向きません。
アルミニウム+フッ素加工のところでも説明したように、アルミはIHに対応していません。IHで利用する場合は「IH対応」となっている底に他の合金を貼り付けた製品を選びます。
またアルミは使っているうちに黒っぽく変色していくことがあります。これは無害ですが、気になるようなら米のとぎ汁などにつけてきれいにする必要があります。こうした変色などを防ぐ意味で、表面にアルマイト加工という処理をしているものもあります。
お勧めは業務用でのシェアも高い中尾アルミの製品でしょう。
ステンレスのフライパン
ステンレス製は熱伝導が悪いのですが、蓄熱性は高いという特徴があります。ステンレスのフライパンでよくある不満は「食材がくっつきやすい」という点です。これは使い方の問題で、フライパンを十分にあたためてから、油を入れて食材を投入すればくっつかずにすみます。
加熱の目安は、フライパンに水滴を垂らしてみて、コロコロ転がるくらい加熱することが目安です。
ステンレスのフライパンは鉄と同じように、もし焦げ付いても金たわしなどでこすればきれいにできるので、そういう意味ではフッ素加工のフライパンよりも長持ちしやすいです。
お勧めは宮崎製作所のソテーパンです。ステンレスとアルミの7層構造になっていて、熱伝導と蓄熱性を併せ持っています。21cmと25cmのものがあり、ふたも備えているので、無水調理、無油調理などもでき、用途が広いのも特徴です。
銅のフライパン
そのほか、あまり一般的ではありませんが、他の素材で作られているフライパンもあります。
ひとつは銅のフライパンです。銅はアルミよりもさらに熱伝導率が高いのが特徴で、フライパンよりも鍋などで使われることが多いのですが、フライパンもあります。弱火でじっくり火を通すときに使われることがあります。
銅素材でいちばん一般的なのは、卵焼き器でしょう。銅製の卵焼き器については下記の記事があります。
結局何を買えばいいのか
はじめて新生活を迎えるような人なら、フッ素加工されたフライパン(と鍋)をセットで買うのがいいと思います。
多少調理も行ってきたというなら、メインに鉄またはステンレス、サブにフッ素加工といったフライパンをそろえるのがお勧めです。
炒め物もしゃっきり仕上がりますし、焼き物も表面カリッと、中はふわっとが実現できます。
使う前に十分に加熱するなどの使い方にコツは必要ですが、それさえ守ればフッ素加工と変わらずに使うことができます。むしろ焦げ付かせてしまっても、復活できて長期間使えるという点では、フッ素加工の製品よりも安上がりといえます。