中村銅器製作所の銅製卵焼き器でふわふわの絶品卵焼き

 卵焼きは、大人も子どもも大好きな料理。ごはんや弁当のおかずに、お酒のつまみなどいろいろなシーンで登場します。甘い味のしっかりと焼いたものもあれば、だしのきいた、ふわふわ食感のものもあります。卵を焼くというシンプルな料理だけに、だれにでもできますが、おいしく、きれいに作るとなるとなかなか難しい料理です。ワンランク上の卵焼きを作るためのアイテムが、この中村銅器製作所の卵焼き器です。

熱伝導性と保温性の高い銅製

 銅は熱伝導性が非常に高く、熱がむらなく均一に伝わるため、プロ用調理器具では銅製の調理器具がよく使われています。この特性を活かしたものが銅製の卵焼き器で、素早く均一に焼けるため、ふっくらとしたきれいな卵焼きができます。

 中村銅器製作所は、東京都足立区で親子4代にわたって、プロに愛用されている銅製の調理器具を作っている老舗です。今回は同社の卵焼き器を使って試してみます。

熱伝導性の高い銅でできている中村銅器製作所の卵焼き器。持ち手の部分もたまごを返すのにちょうどいい角度に設計されている

形状の異なる卵焼き器

 卵焼き器には、正方形の関東型と長方形の関西型があります。甘い味付けのしっかりと焼いた関東の卵焼きには、二つ折りで焼きやすい正方形がちょうどよく、だしをきかせたふっくらとした卵焼きには、長方形が巻きやすいといわれています。どちらを選んでもいいですが、家庭で使うには、関西型の長方形が巻きやすく調理しやすいかもしれません。

 銅は非常に柔らかく、酸化しやすく錆びやすいという特徴を持っています。そのため卵焼き器の内側には、酸化しにくく無害で金属臭のしない錫(すず)が焼き付けられています。

銅の美しい素材を見事な職人芸で卵焼き器として作り上げています

内面には錫(すず)が焼き付けられています

使い始めはなじませる

 使いはじめは、取扱説明書に沿って、油をなじませる工程が必要です。食器用洗剤をつけたスポンジで洗ったのち、7分目を目安に油を入れて火にかけます。弱火で4〜5分煮て、温度が完全に下がったら油を捨てて、汚れを拭き取ります。あとは使っているうちに油がなじんでいき、焦げ付きのない、使いやすい卵焼き器になっていきます。これも鉄のフライパンと同じで育てていくタイプの調理器具です。

ふっくらふわふわに仕上がる

 まずだし巻き卵を作ってみます。卵4個とだし100cc、調味料に醤油と砂糖を少々加えています。調味料は、塩としょうゆであったり、みりんを加えたりなどレシピはさまざま。作り方も卵とだしや調味料を混ぜるときに、腰を残すようにあまり混ぜないで着るようにする方法、逆にしっかり混ぜてから、ざるでこしてなめらかにする方法などいろいろあります。今回はざるでこして、なめらかで口当たりのいい卵焼きを作ることにしました。

基本の出汁巻き卵

 実際の調理には、すでに使い込まれ油がなじんでいる関西型の卵焼き器を使用しました。まずはじめに油を薄く塗って、弱火〜中火で加熱すます。箸(はし)先で卵液を少し落として、じゅっと音がする程度に卵焼き器が十分にあたたまったら、卵液を1/4くらい流し込みます。卵がぷつぷつとしてきたら、箸でつぶして、表面が乾く程度になったら奥から手前に巻きはじめます。

 巻き終わったら、奥にすべらせて、また手前のスペースに油を塗ります。そこにまた卵液を流し込み、奥の卵を少し持ち上げて、卵液を下にも流します。あとははじめと同じように、表面が乾くくらいになったら、手前に巻きます。これを繰り返していけばいいでしょう。

 注意するのは調理中の火加減で、巻き込むのに時間がかかるようなら、卵焼き器を持ち上げて、ガスコンロの火から離しながら行い、焼きすぎないように調整します。焼き終わったら、まきす(なければラップでもいい)に包んで形を整えます。4〜5分ほど置くと、予熱で火が通り、形もきれいになります。

 できあがった卵焼きをカットすると、ふわふわで口当たりのなめらかな、だし巻き卵ができあがりました。中村銅器製作所の卵焼き器は、底部分が厚く蓄熱性が高いため、卵にむらなく熱が伝わりふっくらと仕上がります。表面がやわらかく、ふわふわとした食感でジューシー。まさにお店で食べるだし巻き卵になります。今までフッ素加工の卵焼き器で作って「家庭の卵焼きはこんなものだろう」と思っていた卵焼きは、まったく別のものになりました。

いろいろな卵焼きも

 そのほかにも味を変えた卵焼き、大葉を入れたり、明太子を巻いたりした卵焼きなど、いくつも作ってみました。作るたびに大きさや焼き加減が変わるなど、卵焼き作りの奥深さを感じましたが、どれもふっくらとおいしくできあがりました。また伊達巻きもはじめて作ってみましたが、ふわふわのなめらかな食感のものができました。おせち料理にぜひ加えたいと思ったほどです。

手入れには注意を払いたい

 卵焼きを安定して上手に焼くには慣れが必要だとは思いますが、それでも銅製の卵焼き器を使うことで、間違いなくワンランク上の卵焼きが作れるようになります。

 ただし銅は柔らかい素材だけに、取り扱いには多少注意が必要です。内側は、たわしやクレンザーなどでこすると傷をつけてしまうので使わいません。空焼きも内側の錫を傷める恐れがあるので厳禁で、火加減も弱火〜中火で使います。デリケートではあるが、フッ素加工の調理器具と同じと考えれば手間ではありません。

 本製品は卵焼きを作るということに特化した調理器具で、多用途な調理器具ではありません(もちろん簡単な炒め物などにも使えますが)。しかし卵焼きは上手においしく作れます。毎日のお弁当で卵焼きを作っているなら、ぜひ入手して欲しいです。お弁当を作らない人であっても、この製品がキッチンにあれば、頻繁に卵焼きを作りたくなってしまうでしょう。それほどおいしい卵焼きが作れます。